警官の一隊

 帆村が、この何処に置きようもない重い肉塊を抱えて、腕がぬけそうに疲れてきたときに、やっと正木署長をはじめ、警官の一隊がドヤドヤと駆けこんでくれた。「どうした帆村君。いよいよ蠅男を捕えよったかッ」「はア、ここに抱いて居ります」「なにッ」と署長は目をみはり、「おおそれが蠅男か。想像していたよりも物凄いやっちゃア。待っとれ。いま皆におさえさせる。そオれ、掛れッ」 署長がサッと手をあげると、警官たちは靴のままプールの中にザブンと飛びこんできた。「オヤ、――」 と近づいた警官が愕きの声をあげた。「蠅男は死んどりまっせ」「ええッ、――」「こっちへ取りまっさかい、帆村はん、手を放してもよろしまっせ」「そオれ、――」 警官隊の手にとって抱きとられた怪人蠅男の肉塊は、蒟蒻《こんにゃく》のようにグニャリとしていた。そして口から頤にかけて、赤い糸のようなものがスーッと跡をひいていた。血だ、血だ!「舌を噛みよったな。ええ覚悟や」 と、いつの間に来ていたのか、正木署長が沈痛な声でいった。「ああ、とうとう蠅男は死にましたか」 そういった帆村は、はりつめた気が一度にゆるむのを感じた。「おッ、危い。どうしなはった、帆村はん」 鬼神のように猛《たけ》き帆村だったけれど、蠅男の自殺を目のあたりに見た途端《とたん》、激しい衝動のために、遂に意識をうしなって、警官たちの腕の中に仆れてしまった。「無理もない。蠅男と、徹頭徹尾闘ったのやからなア」 そういって正木署長は、ソッと帆村の腕を握って脈をさぐった。     *

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